サンダルと親指の異常

朝、恋人がゴミを出しに行くとき、わたしのビーチサンダルを履いていった。 帰ってくると、「このサンダル、親指のところ痛くない?」といわれた。 わたしはそれまでてっきりわたしの親指に異常があって、サンダルを履くと痛くなるのだと思い込んでいた。 何…

なくなった木とあたらしい風景

地元の駅のロータリーに植えられていた街路樹。 この木のことを気にかけていたひとがどれくらいいるかわからないが、この木にはムクドリがよくとまり、地面にフンを落としていた。 それでもわたしは信号待ちの横でさわさわと揺れるこの木が好きだった。 しか…

すこしずつゆっくりと動いている

わたしが植物を好いているわけが最近すこしだけわかった。わたしはわたしが動いていないと感じるとき、とてもこわい気持ちがやってくる。現実にそんなことはなくても、そんな気がすることがとてもこわいのだ。植物は、動いていないようにみえる。しかし長く…

ぐらぐらの机と藤森さんの建築

水戸芸術館で行なっていた建築家、歴史家の藤森照信さんの展示を見た。そのあと一時間程度路上観察をしながらいつも通り家の写真などを撮った。水戸という特殊な土地のせいか、よいものを見たからか、ふだんよりシャッターをきる回数が多かったような気がす…

普通ということへの絶望

熊谷晋一郎さんの「リハビリの夜」のやっと読み終えた。 この本には医師であり、脳性まひという障害をもった熊谷さんの実体験と考察がわかりやすく、しかし生々しく記されている。 やっと読み終えたというのも、この本を途中まで読み進めていた途中で私自身…

毎日のしるし

朝起きて今日という日になってから今日が今日であるということを見つけるまでに毎日時間がかかる。 見つけるまではどこかに取り残されたような気持ちで不安でいっぱいになる。 はやく今日を始めなければ。 そんな焦りが寝ぼけた頭を支配する。 最近、育てて…

やすむこと

わたしはほんとうにやすむこととはどういうことだろうと考えてきた。 朝起きて、夜眠る。 このサイクルの中のやすみはいったいどこにあるんだろう。 やすみといえば睡眠が思い浮かぶ人も多いだろう。 しかしわたしはまったくそう思えなかった。 睡眠は無意識…

手間のはなし

アートにしろ建築にしろ、飽和した物質世界の中でどういう態度をとるかという問題意識を感じる。まっさらな土地に新しいものを組み立てていくことは今ではほとんどないように思う。既存の、古くなったもの、いらなくなったものにたいして入りこんで新しい価…

はだかのいえ

住宅街を歩きながら、よその家の写真をとりつづけていて最近ようやく気づいたことがある。 主に三角屋根の平屋が好きでよく目がいくが、家の周りには必ず塀や生垣や門がある。 今まで特に気にならなかったのはそういった家の周辺の構造物も好きだったからだ…

倒木

白山にある小石川植物園にいった。 ここの正式名称は東京大学大学院理学系研究科附属植物園という。 東京大学の実習施設でありながら、普段は植物園として一般に開放されている。 いくつかのエリアに分かれて様々な植生が観察できるところは普通の植物園と変…

ひかり

ひかりには二種類ある。 ひとつは太陽から届くひかり、もうひとつは人が作るひかり。 太陽からひかりが届いている時間を昼といい、人が作るひかりが活躍するのが夜だ。 ひかりを作り出してからひとは暗くなってからも活動できるようになった。 夜の世界での…

衛星都市

わたしの住んでいる町は千葉県北西部の典型的なベッドタウン。 早朝の上り電車はいつも満員だ。 ドーナツ化現象で穴の空いた都心への呼び戻しが活発化する中、こちら側もまた活発な都市開発が進んでいる。 わたしの住んでいる町では「奏の杜」というニュータ…

ほんとうのいえ

私はいつからか街を徘徊するようになった。 気晴らしや暇つぶしといえるかもしれないこの徘徊は実のところ家から外にでるということが一番重要なことなんだと思う。 わたしは千葉県北西部のいわゆる衛星都市、ベッドタウンのマンションに家族と住んでいる。 …

ゆれるいえのイメージ

豊田市美術館で行われていた杉戸洋個展「こっぱとあまつぶ」をみた。 杉戸洋に偏見をいだいている人なんかがみたら一気にそれがふきとんでしまうようなすばらしい展示空間だったけど、それは目撃した人が知っていればいいことなので割愛して、杉戸さんが扱う…

知ることを取り戻す運動

昨日はCAMP10周年企画のひとつ「わたし|あなたに、あったこと|なかったこと」を聞いてきた。 トークイベントで、ゲストは飯山 由貴さんとBarbara Darlingさん。 おふたりの特徴としては、本来作家によって表現されたものが置かれるアートの展示空間にそれ…

だれでもないについて

医師の熊谷晋一郎さんのインタビュー記事や鷲田清一さんの臨床哲学にふれて、障害当事者による「当事者研究」に興味を持った。 当事者研究が始まった北海道浦河町にある「べてるの家」。 そこで行われていることの映像記録を見ていていちばん印象に残ったこ…

誕生日の1日前、これまで覚えてきたことをぜんぶおっことしてしまったので、それを今日までちゃくちゃくとひろいあつめてきた。 その中にあたらしいものもまじっているからそれがいまはうれしくて、もうずっと思い出せないことのかなしみをなぐさめている。

緑色のソファの三日間

大学に向かういつもの電車に乗っていた。 遅刻しそうなギリギリのいつもの特急電車。 僕は座ってそのとき夢中になっていたブルース・チャトウィンの「パタゴニア」を読んでいた。 殺伐とした旅の中で出会った強盗団の話かなんかが繰り広げられていた。 まっ…