読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

倒木

白山にある小石川植物園にいった。

ここの正式名称は東京大学大学院理学系研究科附属植物園という。

東京大学の実習施設でありながら、普段は植物園として一般に開放されている。

いくつかのエリアに分かれて様々な植生が観察できるところは普通の植物園と変わらないのだが、ここの印象は植物園というよりは庭、あるいは森だった。

植物たちが窮屈なところに押し込められている印象は全くなく、むしろ管理されることで生き生きとしているように見えた。

決められたルートも特になく、道とされているところも奥に進めば進むほど枯葉や土に覆われて境界があいまいになる。

ところどころに立っている看板に落ちてくる枝への注意をうながされる。

これはもう管理できないほどの大木があることを示しているんだろう。

実際地面には大きな枝がたくさん落ちているし、ときどき、どこかで枝の折れる音がする。

奥に進んでいくと少し開けた場所にでた。

そこにひとつの倒木があった、

太くて立派な木なのだけど、2〜3mぐらいのところで裂けてしまったようだ。

木は生きているのか死んでしまったのかわたしには判別できなかったが、残った方も、倒れてしまった方もそのままの状態で残してあるようだ。

その倒木を近くでよく見てみると幹にも、周りの地面にもキノコがたくさん生えていた。

雨で湿った幹が、水をたくさん蓄えるようで、周囲の土のやわらかさも他のところよりすこしやわらかい気がする。

どうしてこの木が倒れてしまったかはわからないが、倒木は倒木としてそこに秩序をあたえていてあるようで、その一帯の風景はこの植物園でいちばんおだやかにみえた。