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普通ということへの絶望

熊谷晋一郎さんの「リハビリの夜」のやっと読み終えた。

この本には医師であり、脳性まひという障害をもった熊谷さんの実体験と考察がわかりやすく、しかし生々しく記されている。

やっと読み終えたというのも、この本を途中まで読み進めていた途中で私自身に抑うつ症状がでてしまって、医療や障害に関わるものをできるだけ遠ざけていたという経緯がある。

いまこの本を読み終えて当時のことを振り返ると、学校というところからでるかもしれないという可能性が高いにも関わらず、社会とのつながりがうすいことに焦りを感じていたことがいちばん負担をかけていたのだと思う。

社会にでてしまったら「普通の人」であることが求められると怯えていた。

もがけばもがくほどその「普通の人」という存在しない観念がからみついた。

思い描くハードルの高さに到底届かないことに絶望し、硬直してしまった。

しかしわたしは治療する過程でどうすればこの硬直がほどかれるのか試行錯誤を繰り返した。

労働をしたり、恋をしたり、友人も増えていったが、思い描く社会とのつながりは得られないままだった。

だんだんと到底届かないと絶望していた「普通の人」にはなりたくないという忘れていた気持ちがよみがえってきた。

むしろそこへどうしてもいくことができない不自由さや敗北に美徳をもって、いまここにいる。

これからもおそらく社会の規範とはズレた生きかたをしていくのだと思う。

型にはまることの安堵感は得られない代わりに型から逸脱する、断念するといった官能を味わうことができる。

決して普通でない社会との関わりかたにも、自信をもってのぞめるように、わたし自身が見つけたよろこびや自由をしっかりとつかまえていなくてはいけない。

熊谷さんが教えてくれたのは、決して健常であることが正しいことでも、健康的なことでもないということ。

いまはだいぶ症状も落ち着いてきたが、また自分を見失わないようにもうすこし自信をもって、わたしの自由な生きかたをかたちづくっていきたい。