魂の行方、場所の寿命

ぼくが死んだら魂がばらばらになってそのうちのひとつはここに行くのかもしれないと思う場所がいくつかある。

今日そう思える場所がひとつなくなってしまったと知らされた。

そこは7年ほど通っている喫茶店だ。

カウンター席の一番端っこ、小さい窓から外が眺められる席が大好きで、うすい扉をひとつ挟んでいるだけなのに外とは違う世界にいるような気分になれた。

 

なんとなく、ほんとうになんとなくだけど、ぼくは死んでもここに戻ってこられるような気がしていた。

死んでもここで外を眺めながらタバコを吸って、コーヒーをすするんだと鮮明にイメージできるような場所だった。

そんな場所もぼくの寿命がつきる前になくなってしまった。

考えてみれば当たり前で、大抵は場所よりも人の寿命の方が長い。

でもなくなることなんてまったく考えてなかった。

あんな美しい場所が、この世とあの世の間にあるような場所がなくなるなんて。

ぼくはたしかにあの場所に魂を置いてきた。

その魂はどこへいってしまったんだろう。

場所といっしょになくなってしまったのだろうか。

信じたくはないけど、いま感じている喪失感はぼくの魂のひとかけの居場所が失われてしまったからだと直感している。

ほんとうにいい場所には何人もの魂の置き場所になる。

ぼくの寿命がつきるまでにいったいいくつあんな場所を見つけられるだろう。